ザンボア
詩・モード 
Z a m b o a  volume . 7

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詩/アラウンド
 
 
 
 
 あなたは詩が好きですか?

 例えば街頭でそうアンケートをとったとして、
 ええ好きです。詩集も一年に何冊かは買っているし、
 いちばん好きなのは田村隆一ですね、やっぱり。
 なんて答える人は、あんまりいないんじゃないかと思う。

 僕は学生のときに中原中也の詩集を文庫で買った。
 それは確かにどこから読んでも中原中也で、
 ナイーブかもしれなかった僕は、
 どうしたって中原中也を読まなければならなかったけれど、
 (だってそういう雰囲気ってあるでしょう?)
 それは当時の僕のしぐさをいろどったり、
 中也の詩集を読んでいるポーズをつくってはくれたと思う。
 でも本当のことをいえば、
 中原中也のその詩集に、
 誰にも見せようとしない感情のひだや、
 情け容赦ない現実の前にはぎとられてしまった親密感を、
 自分がちゃんとまだ人間なんだということを、
 もういちど確かめられることは、ちょっとむずかしかった。
 たぶん時代背景のこともあるかもしれない。
 抱えている状況が違いすぎるというのも、
 あるいはあったかもしれない。
 少なくとも僕には。
  
 
 詩というのは人間のこころを相手にして、
 初めて成り立つもののように思う。
 どうして誰も詩を手にとることがなくなってしまったのか、
 考えたことはある?

 いま生きているこの時代の僕達の言葉で、
 普通に生活している普通のことを、
 高度な技術で書くことはできるんじゃないかな?
 高度に見えることが、本当に高度なことなんだろうか?
 中原中也の詩集は、
 どうしていまでも高校生が買ったりするんだろう?
 いま、詩を読むと、
 学会の報告書を読んでいる気分がするのは、
 いったいどうしてなのだろう?
 高度に見える詩を、
 詩を本当に必要としている人が手にとることが、
 あるのだろうか?

 読者おいてきぼりの技術なんかいらない。
  
 
 今月は、
 メールマガジンをその主な活動のステージに選んでいた、
 玉村啓の特集です。

 
 
  
 text●木村ユウ
 


 photograph : : ni-na 


 
 
 
 
 

 
 


 photograph : : ni-na
 
 
 
 


絵の終わり」
 
                    玉村 啓
 
 
 

ぼくにもわからないけれど もう絵を描くことはやめにするよ

絵を描いていることは自分を探している旅のようだった

描いてる絵描いてる絵 せつない絵ばかりで

これ以上やるとつらすぎるんだと思う きみも ぼくも


毎日だけれど 今日もぼくの世界はこんな感じだった

ぼくもみんなもうそをついているような なあなあな雰囲気

、、、、、うん なんだかね  

変わんなくて 



ぼくだってわからない

絵を描いているときは幸せなような気もしたし不幸せなような気もした

ただいつもどうどうめぐりのような気ははっきりわかっていた




きみは背にかかるくらい長い髪をしていた

風が吹いて髪の先が右の口元にかかる

どうしてかぼくの顔は見ず

下向き加減で 

指でその口元にかかった髪をとく

 

きみは 

あなたの考えていることがわからないのと言う

あなたは私のことを好きだと言う

だけれどもあなたは現実感がなくて

私は自分が本当に求められているとはどうしても思えないし

ほんとうにあなたが何を考えているのかわからないの


ぼくだってわからない

ただ絵を描きたかっただけなんだ






ぼくはあしたなら

世界を変えられるんでしょうか


ねえ 答えてよ






バスが何台かやってきては 

通り過ぎて行った


目を閉じると 

いろをつけないあなたがいいって

言ってくれたことがあったけれども 

きみの 海でかがんでいた気持ちは助けられなかった

あのときのことを思い出す


絵にがんばれ なんてだけしかぼくが言えなかったこと

きみが明るすぎて なみだが止まらないじゃないか 



楽しかったこととかせつなさとか出てきて

そういうふうにいろいろな人と出逢った 

ぐるぐるとした見たもの見たものが

ぼくにとってはつらくなってしまう 体温を感じてしまうほど


その間 窓ガラスに映る雨が 1つ1つすじをつくっているけれど

淡く霧が発生しているような 朝5時の中で

教会のステンドグラスの デジタルぎみの音楽の鳴り響くところ

が それとよく合うような気がする


目を閉じたあとはもう 目を伏せた

目を伏せると こんどは

雨の降ってる真上の空を見上げるぼくの感じがする



それがぼくの持っている世界





ぼくはもう絵を描かない

それでも昨日 友達と話した

少し元気が出た


きっとね それでいいんだと思う

間違ってないよ 

でも間違ってないけれども 

ぼくはかなしい









 

 photograph : : ni-na

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お父さんとの葛藤が特にあるのですけれども、
でもお父さんが、
「雪ってどんな音がする?」っていうのを
ララに尋ねるシーンがとても良かったです。

 
雪ってね、
音がしない、ってララはいう。
雪はすべての音を飲み込むの。
雪が降りつもると、しんと静かになる。

と言っています。

手話での会話です■mail magazine"Tokyo night wave


 

 
 
 
 


2月の朝の陽射しには」
 
                     玉村 啓
 
 
 

2月の朝の陽射しは ドライブをするにはとても心地よくて 
       
交差点に入ると 窓ガラスから少し木々の反射がさえぎる

 

まわりのものがはっきりと見えるよ
 
ただ 僕は笑顔が大きくなる

 

でもこれが夏だったら スピードをつけてもっと先へ 

進むことができるのに

 

          

野球場の照明の上には大きな青空が広がっている

きみはそばでカラーボールを空に投げてみる

世界がなつかしい輝きでひろがった

 

    
僕はただ 静かに生きたかった

静かに日々を過ごしていたかった

生きるのがつらいとき嘘をついたり

でもとても器用になんか生きれそうもない

 

そしていつのまにか 

僕は外ばかりを見ていた

夏に 列車で前髪が揺れる      

ただ 景色が流れていくのを見てた
            
          

 

きみと話をするようになってから毎日が楽しい

でも人を好きになると
 
なぜさみしさを人一倍感じるようになるんだろう

明日が見えないほど 笑っている方がいいよ

  

大きな積乱雲とか

木々の間から光る太陽とか

寝転んだら気持ちよさそうな大きな原っぱとか

クレヨン  うさうさリンゴ

  

  

  

私の気持ちはどこへ行くのか

鋭どい方へ  ---

やわらかい方へ --- どちらへ行くのか

 

愛を失った私は

一生をその愛の思い出を想いうかべるだけ

何をしてもその思い出の楽しさには勝てない

自分の一生と引き換えにその思い出を守ることだけ

私はその中で生きる
 
そんなことを聞いたことを思い出す

 

 

 

 

空気が乾いているみたいだね

 

センチメンタルなキスができそうな

2月の朝の陽射しのある 

車の中でそんなことを思った












 
 

 photograph : : ni-na

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私は最近、詩を書けなくて悩んでいます。

時間がないからなどではなく、
なぜだか、書けないのです。
 

私が詩を書くようになるのは
自分がふっと、
書きたいと思った時だけに書くようにしていますので、
そう思う気持ちがないと書けません。

でも思い立って、
無理やりに書こうとするのだけれど、
書いたものはとても良くなく、捨ててしまいます。

私は最近、
自分がつまらない人間になっているのかな、
と思ったりも、してしまいました。

やらなきゃいけないことで頭が毎日追われて、
でも、なかなかやれなくて、結局疲れて、、、。

 

昔自分に悩んでいた時があって、
そのころ大学を復学して、卒業論文を書いていて、、
その卒論指導の先生(とてもいい先生で。。)の本を
読んでいた時に、
こんなことが書かれていました。

私はよくこの言葉で励まされたものです。

  「僕たちはなんでもないことに対して
   もうちょっと強くならなければいけないと思う」■mail magazine"Tokyo night wave
 
 
 
 
 


 
 
 

 photograph : : ni-na













秋雨で思ったこと」
 
                      玉村 啓
 
 
 

秋の小雨と 公衆電話の光が 

アスファルトを少し輝かせているようです

そして風の揺れが 素敵で

夜の街はなんだか 遊んでいるみたいで



僕は今日きみと遊んだ

お互い笑っている顔ばかりでした


きみとの帰り きみと別れて

後悔した気持ちのまま

そんな夜の街を 

座った向かいの窓の外から見ていた



たぶんきっと

きみは今 一人ドアの窓に額をつけて 

うつむいているんだろう

でも 何にうつむいているんだろう


そんなことが見ている空虚な場所に

浮かびます




きみが愛しくてずっと見つめていたことは

きっと僕のありのままの気持ちで

会っている時は全然わからなかったけれど

不安になって 毎日電話をしたくて


僕は不安になるから好きになるのか とも思いました

切ない気持ちが強くなってくると

雨の音も 

とても大きくなっているような気がして 


そんなことを考えていたら

電車の速さよりも 自分の時間がとても早いように感じる



そうだね 時間ばかりが早く過ぎる

仕事の悩みも アフタースクールの疲れているけれど通っていることも

自分だけで勝手に想像しているきみとの結婚も 

とても忙しい毎日で疲れていて 

そんな僕は迷っていて

だったら乱暴にでもいいから きみを抱きしめればよかった



少しばかりの雨の滴り落ちている窓から

もう一度 僕は夜の街を見た

心のうつろいや とりとめのない会話や 

見ているもの 

なんだかすべての世界が

とても透明にみえるよ


そして
  
雨で僕は何かを想い出すようでした









 


 photograph : : ni-na
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詩は、自分が書く、誰かが読む、そのあわいを生きます。
誰かに読んで頂かないと詩は響きません■mail magazine"Tokyo night wave
 
 








校庭の詩」
 
              玉村 啓
 
 

校庭を走るきみをみていた

静かに夏の空気がかすんでいた 

または静かに太陽のきらめき そんな呼吸の感じ


ぼくは教室の黒板に字を書いてみた

それから 机に置いてあった

教科書を開けようとしてみた瞬間

風で揺らめく

カーテンの窓の外をちょっと見てみた


遠くから飛行機の飛んでいる音

なびいてる鉄棒の地面の草木

空に鳥が飛ぶ




ぼくは そんな

瞳に映るはじめての果てしない時間をみたけれど

何年後か 大人になりきづいてみると

それは

その瞬間の終わりだったというのがわかった



でも 言葉にできないこの思いを 

どこかで伝えられたらいいなと思う

そう思う 

毎日最近そう思う








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僕は、僕のことを話すと、、

いつも中途半端だと言われます。
それについていつも情けなく自分を感じてしまいます。

 

それと変な話もします。

大学を辞めてから僕は何にもしていない時、
とてもおかしくなりました。

朝起きれなくて夕方起き、寝るのがいつも明け方という
生活を繰り返していました。

バイトをやり始めてから徐々に変わっていったのだけれども、
それでもまだずっと、おかしかったんです。

 

そんな時、自分の詩を読んでくれてうれしがってくれる
京都の芸術家の子がいました■mail magazine"Tokyo night wave


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  photograph : : ni-na
 
 
 
 
 
 
 
 




「 hina no sunahama 」
 
                    玉村 啓
 
 
 

小さな漁港近くで ぼくらは車に乗って旅をした

  
小さな砂浜があり きみは

赤いトリッペンのサンダルを脱いで入った

きみは横に流れていく 楽しそうに

ぼくははずかしくて入れなかった



あそびつかれたぼくらは 夏は終わって閉鎖された
             
誰もいない海の 砂浜の上でふたりしてすわった


きみは泣いているようにうずくまってた

ぼくは何にも声がかけられなかった


波の音がうるさいって

きみがふつうに言った

ぼくは ぼくは 結局どこへも行けない



一週間後 東京できみを迎えた

あの時の赤いトリッペンの

サンダルのままで 綿のスカートのままで

でもどうすることもできなかった

ぼくは大人でなかったことをこの時ほど後悔した




ぼくは今でも電車の中で きみと同じ

赤いトリッペンのサンダルと

ふんわりとしたパーマの女の子を見かけるたびに

あの時の小さな砂浜のことを思い出す


あれからぼくらはどこかへ行けたのだろうか

ぼくは 結局いまもどこへも行けない 

















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Tokyo nigiht wave.

日常大した事件などなくても、人の感情は熱くて深くて静かに動いている。
東京在住詩人keiが、時間のたまりの叙情、そんな詩を書いていきます。
 
私が詩をとおして伝えた事に、あなたが感じた想いが、
あなたの生きている時間の流れの風景は一瞬にして消えるかもしれないけども、
でもその想いを、詩で永遠につながるようにしていきたい、と思ったからです■mail magazine"Tokyo night wave












2000.7.30〜2001.2.22 http://www3.ocn.ne.jp/~tokyoart/
メールマガジン"Tokyo nighit wave"より(現在は休止しています)





 photograph : : ni-na
 




  
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   2002.2.1