ポエトリージャパンの出航にあたって



 ブンガクを志す人間がこの詩を取り巻く現状を本当にわかっているなら、さっさと逃げ出して小説を書き、そちらで賞を取ることを考える方がよっぽどましな考え方というものだ。このまま詩を書いていても、少なくとも社会的にはなんになるということもない。歳をとるまで運良く書き続けることができれば、幻想としての詩壇のすみにでも少しは居場所くらい持てるかもしれない。しかし、それはできないだろう。僕達はそれがファンタジーだと、もう知ってしまったのだから。
 
 僕がここに居続ける理由は、根のところには確かに詩を愛しているから、詩に救ってもらったその経験があるからだということを否定しない。しかし、そのことで現実が見えなくなっているわけではない。僕がこの場所にいるのは、詩のポテンシャルを分析してみて、そこに可能性があり、またそれが決して小さくないということを知っているからです。詩が駄目なのは、詩が駄目なのではなく、詩を駄目にした要因があるわけです。書き手が実験に溺れ、人のソウルにまで届く言葉がなくなってしまったということ。詩人は、言葉を殺してしまった。
 
 僕は先だって行われた「フェイズ・2002」の冒頭で、僕達は潮流のなかにいるのかも知れないと書きました。しかし僕達はただ流されるだけの水ではないのです。僕達が選べる行き先もある。ポエトリージャパンは長く必要といわれ続けてきたインフラを提供していきます。そして、生きた言葉を生きている人のソウルへ届けていくことをします。僕達の望むヴィジョンは決してファンタジーなんかじゃないということ、それをきちんと手に入れることができるんだということ。それを足元から実行していくことで、実際に詩の現状を変えていきます。
 
 あなたがこの潮流の、行く先を決めるのにコミットメントしていくこと。それを僕達は望んでいるし、それこそが世界を変える唯一の、そして現実の道なのです。
 
 
 
2002年12月30日
 
        ポエトリージャパン代表 木村ユウ







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