選者  いとう http://poenique.jp/
 
 
 

 
 
 
Forget-me-not
    深雪
 
 
 
 
昨日の夜落とした紫色の花の種
 
残暑をサイレンが包む頃
 
目に付くようなら摘んでしまおうと思った
 
 
 
白い花弁を標に降り注ぐ、その微風は迷彩ではなく
 
 
 
草いきれの香りの男がやってきて
 
未成熟な地に聞き慣れぬ呟きを残した
 
左脳を通過すらせず夏の午後を駆けてゆくその響きは
 
まだ誰も触れたことのない句読点のようだった
 
 
 
世界を形容する言葉が見当たらないので
 
此処まで沈黙を保ってきたというのに
 
 
 
 
 
突き落としても突き落としても突き落としてもまた
 
隠喩と並列化に覆われる空へ
 
雨雲は還って行くのだろうか
 
 
 
 
 
花の名を思い出してしまいたい
 
 
 
草いきれの男は知っていたのかもしれない

 
 
 
 
作者サイト  http://kamakura.cool.ne.jp/spacecraft/ 
 
 


 
 
 
 
 

  子午線のカーブ   ケージ
 
 
 
発熱した街にお似合いの
発情したぼくたち
 
子午線のかすかなカーブを
湾岸沿いにすすむ
 
たそがれのなだらかな傾斜を飲み込んで
肥沃な丘陵に出る
 
ぼくたちを取り囲んでいるのは
巨大な水の列柱
 
くずおれる少し前の
清冽なおののき
 
ぼくたちのすすむ先に
子午線のカーブはまだ光をとどめている

 
 
 
 
作者サイト  http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/1649 
 
 


 
 
 
 
 

  響   掛川 享嗣
 
 
 
君の包容力以上に ぼくの欲望以上に
この飛翔は力強い
その羽ばたきは 常識の追従を許さない
だが
舞いながら上昇し続けた その最後に
君がいたとしたら
この体は そこを死に場所にするだろう
亡骸を抱いてくれ
 
この心は それ以上やそれ以下を越す
新しい旅に出る
 
見据える者として
言葉どもを従者にし
又、それらの従者となり
新しい旅に出る
 
さようなら
 
舞い上がった 高みから行く末を突き落とす
 
波風の泡立ち 吹雪の咆哮
十字軍の末裔が 蹂躙してゆく
欲深い荒野
切り裂かれ 生もなく落とされる言葉達
猛き声を挙げることもなく 撒き散らしていくのは
詩の破片
残酷に刻まれた轍をなぞって
誰もいないここに辿り着いた者の名を
知る者は未だいない
 
 
 
ぼくは
詩作という発光音
その残響でありたい

 
 
 
初出  狂人の詩  http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/8751/ 
作者サイト  http://www2.odn.ne.jp/~cfa19930/index.htm 
 
 


 
 
 
 
 

  思っていること。   ohatu
 
 
 
お前の人生なんて
イモビライザ。
電子ロックキー、セコム、指紋照合。
どうして、みんな泥棒の被害に遭わないようにはするけど
誰も泥棒なんてしなくてもいい社会を作りたいとは
思わないんだろう。
どうしてこの社会には泥棒がいるか説明できない女の子は
母になるべきでないと思う。
コンドームつけなさい。
あなたの子供にカギをかけることを教える前に、
どんな環境に置かれても他人を羨まない心を、
後悔しない人生の歩み方を、
心から笑うということを教えるべきではないのか。
そして何よりも愛情というものが
確かに存在することを
強く強く伝えるべきではないのか。
コンドームをつけなさい。
価値観や学術や
愛、と呼ばれている欲望や
愛、と名付けたあなた自身の弱さから
愛する心を解き放す日がくるまで
コンドームをつけなさい。
口にコンドームをつけて
言葉が
誰にも届かないようにすればいいと思う。

 
 
 
 
作者サイト  http://www.enpitu.ne.jp/usr7/70003/diary.html 
 
 


 
 
 
 
 



 
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