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 セコンド(選外佳作)vol.30  Send us your poetic heart.

 







大覚アキラ SITE



あたらしい世界にやって来たぼくたちは
とりあえず線を引いた
 
ぼくの土地
きみの土地
あなたの土地
彼の土地
彼女の土地
先祖の土地
生まれてくる子ども達の土地
神様の土地
誰のものでもない土地
 
そうやってたくさんの線が引かれ
線が増えるたびにぼくたちは
賢くなったり豊かになったりしたような気が
なんとなくしたけれど
もう線を引くための土地が
そう多くは残っていないことに
ぼくたちは気づいていた
 
次にぼくたちがしたことは
土地の交換とかそういうことだった
線の引きなおしがあちこちでおこなわれ
ある者は
より広い土地を手にし
またある者は
土地の代わりに富を手にしたが
はんたいに
騙されて土地を失う者や
線の引き方のいざこざで命を落とす者もいた
 
そのうちに
こっそりと線を引きなおして土地を広げる者や
力ずくで線を引きなおす者が現れはじめ
ぼくたちは線を守るために
夜も安心して眠れなくなってしまった
 
線を踏み越えた者は
子どもであろうと容赦なく殺され
誰もが線のために人を疑い
誰もが線のために人を殺し
誰もが線のために命を賭けた
 
そんな繰り返しに
ぼくたちが疲れきったある日
雨が降った
雨は何日も降り続き
あたりは水浸しになった
 
数週間にわたって降り続いた雨が上がると
線はすべて
きれいに消えてしまっていて
ぼくたちは為す術もなく
あたり一面のぬかるみの中で
ただ呆然と立ち尽くしていた
 
やがて一人の幼い子どもが
落ちていた棒切れを拾い上げ
ぬかるんだ地面に一本の線を引いた
子どもはつたない手つきで
その線に葉と花びらを描いた
 
ぬかるみに描かれた一輪の花が
太陽を浴びて輝くのを眺めながら
ぼくたちは
ようやく微笑むことを思い出した





河野龍彦  SITE 
 
一読して、やられた、と思った。学生時代に発言した事が、主旨が一緒だったからである。
「国境がなければ醜い戦争が起こらないのだ。」と、作品は、うまく、構築されているし
基本的な指摘は、全く無いようだ。コツコツと投稿してきた甲斐があったようだ。
次の作品期待しています。セコンドの座から下りないように。









KAWACHI SITE



傘をさして
 
雨をよける
 
よけられた雨は
 
無限に降り続き
 
やがて海になり・・
 
 
傘は
 
たくさんの雨をよけるけど
 
傘は1つあったら
 
何度でも雨から守ってくれる
 
そんな傘に
 
いつでも感謝できるよう
 
雨にうたれて
 
水びたしになった傘を思う





河野龍彦  SITE 
 
単純な日常のなかで、うまく切り取り、作品に仕上げた事は
詩を書く者の原点である。その報いがセコンド掲載となった。
新鮮である。作品が。







日々の置場所
たるみ SITE



人は偶然という海を
とりあえず 沖に向かって泳いでいる
 
赤信号を待っている人々にむけて
「手動」と大きく横断歩道に書いた
普段通りの朝に「普段通りの朝」と
タイトルをつけた
 
世界地図から地球儀へ
 
やっと陽が照ってきた
しっかりしないと
石像を横切り 町並みが見える所
を 手のひらにそっと包んで
 
最終ページ
書きかけのまま置いて行く
 
未来ーー
その先にしかないもの
積み上げてきたものの先にあるもの
ぼくたちの次世代の話
そこまで気にしながら
毎日を生きていけないけれど
未来に何を残すかと考えると
今日という日はまた新しい
 
その時 105歳を迎えるおばあちゃんが
風にあたっていた
 
何もなかったように





河野龍彦  SITE 
 
最後の二連が、この作品を活かしてくれた言葉。
読み手に一言。意味を辿る作業より感覚的に、何かを感じて欲しい。
たるみさんは、作品を毎回真っ先に投稿してくれる人。「努力」という
言葉が、いちばん似合う。








 
 
 
【次点及び統括的感想】 
 
次点は、あべかめりさん一作(セコンドにと悩んだ作品)初投稿であるから
次の作品を見てみたい。次点は六割近く基礎的な土台を掴みながら、自分独自の
言葉を模索している。私のレビュー無しでも、推敲しながら作品を客観的にみる
力はすでに備わっている。セコンド掲載の目標ではなく、独自の言葉を創作にと
没頭して下さい。セコンドに投稿しないのでは無くて。最近作品のレベルが上がって
きているなと、実感しています。嬉しい事です。学んで下さい。書き続けて下さい。
その一言に付きます。 河野龍彦






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