現場にいるわたしのきもち 
 詩で食べている現場から 
  
                        
上田假奈代 
 
昨日の続きへ 

今年にはいって、基本的に詩の収入で暮らしています。
独り暮らしですから、そんなにお金はかかりません、猫1匹養ってるだけ。それでも収入は少ないです、休みなく働いているのに。

何をしているのかといいますと

1 詩が 詩人以外の人にも親しまれる環境づくり
●大阪市発行のフリーペーパー「C/P」(8万部)に詩のコラムを連載中。
詩を掲載するのではなく、詩人がこんな風に考えているよ というコラムです。

おかげさまで好評、現在CDROMを制作中。
これは「C/P」から事業予算をもらい、それを制作費にあて、その模様を紙面にレポートする。完成し、販売すれば、その売上げから事業予算に還元し、それぞれのギャラを配分する仕組み。この仕組み作りからたちあげていっているので、ガムシャラです。

●えるび開催(まずは、月1回、半年)
ラジオデイズとわたしが主催ですが、出演はしません。関西でのリーディングイベントは、ほんとにまだ少なく、シーン活性化を狙っています。
「えるび」は、若手詩人を育て、また詩に親しんでいない人にもことばっていいよな、とか、リーディングっておもろいやん、と馴染んでもらいたい。大阪のいま注目されてるらしい南船場という場所、路面のカフェを会場に選びました。

毎回、詩人以外のジャンルの人1人をよびます。そして、詩人を2人。詩以外の人に、語ってもらうことで、いろんな考え方、見方を感じてもらいたい。ことばのキャッチボールは、つまり気持ちのキャッチボール、コミュニケーションなんだってことです。これも、えるびの特徴です。

そして、やりっぱなしではなく、伝える努力を出演者に自覚もってもらいたいと願っていて、そのための環境づくりをいま一生懸命しています。「お客さんに来てもらってよかった」と思ってもらうことを、おおくの出演者は、もっていないようにみうけられるので。出演者にもイベント作りに参加してもらっています。

制作の面をわたしが担当し、舞台技術や構成をラジオデイズが担当。それぞれの持ち味をいかしあっていて、好ましいのですがそれでも、ものすごい仕事量です。そのうち、関係者用BBSも公開しますのでキリキリてんてこまいしてる様子をみてやってください。

●「詩の学校」開催
ワークショップを4月から2校、この10月からは4校はじめています。参加者は、小学校以来、詩に親しんだことがない人から、自分でこつこつ書いてる人まで年齢も職業もばらばら、意識もまちまちです。でも、そのズレがその場を共有することで、うねって広がっていくのは興味深いです。

そのうち2校はわたしの主催です。主催っていうことは、会場をきめ、情宣し、参加者の人数がわたしのギャラになるわけで、シビアですわ。

常連化を避けるようにしながらも、維持していく努力を惜しまずにやっています。

また、人材育成の部分もあります。イベント開催などの最終受け皿をわたしがすることによって、自発的な行動を促しています。詩の学校としての催しが何度か行なわれました。

●イベント開催
やればやるほど、赤字になるイベント。でも、プロモーションでもあり、また上達であり、現場に魅せられてることもあって底力だして、主催します。

これは、詩を書く力や朗読力とは、ちがう力が必要かも。とても地味な作業の連続だし、コミュニケーション力が問われるところですが、ある意味、責任の果たし方の覚悟の修行としてわたしは鍛えられているなと思っています。

●イベント出演
おおくの人にみてもらえるわけですから、喜ばしいことです。

まづ出演交渉からはじまるわけですが、詩人が主催しているものほどギャラがない。これは、問題だと思っています。

最近は、大学や行政からの依頼が増えてきたので、喜ばしいのですが、それでも、マネージメントはほんとに大変です。この秋から出演交渉だけは、他の人に頼むことにしています。

わたしが出演する時は、そのイベントの主旨、会場の雰囲気など考慮します。作品を書き下ろす必要があれば書きますし、小道具なども考えます。

●コラボレーション
音楽(ジャズから民族音楽)、ダンス、絵画、映画、緊縛、、さまざまなジャンルから声がかかりますし、自分でも企画します。

たくさんの発見もあるし、違うお客さんにみてもらえるチャンスだから。ことばって、いろんな可能性があるのだなあと、改めて思います。そして、ことばって、かなり有効活用されるものなのだなあと気づきました。

●CD発表
これまで、2枚のCDを自主発売しています。詩集をつくりたくないわけではありません、謹呈合戦するのが嫌で、パッケージとして、CDもありでしょ、という気持ちで作りました。

手売りと、ネット販売(手間がかかるので、ネット業者に依託)、依託販売でほぞぼそと売っています。もっと効率のよい販売戦略が必要だなあ、と思います。

備考:CD業界がほんとに売れなくなっているのも要因かなと思うのですがモノを買う衝動力がなく、あんまり売れません。99年発売の1枚目はバブル後とはいえ、300枚完売。02年発売の2枚目はやはり、売れ行きがよくない実感があります。(一応、1枚目の倍の速度で売れてはいますが)

自分自身のパッケージをもつために来年から、詩集作りにとりかかろうと思っています。やってみなくちゃ、わかりませんものね。

●ネット
昨年5月から公式サイトを開設しました。画面で詩を読むのが好きではないので、詩は掲載していません。

上述の「C/P」や、フライヤをみて、サイトを訪れ、詩の学校やイベントにきてくれたり、CD購入してくれるという効果もあります。

自分でhtmlが触れないので、まともに更新もできていませんがネットとも上手につきあっていきたいし、活用したいです。

●事業展開をはかる
これは、まだ取り組めていないのですが、病院朗読や、高齢者向け詩のワークショップをした実感として事業展開を図れるのではと思いました。

また冬には、障害者とそのまわりの人(スタッフや家族)、両者へのワークショップの依頼がきています。

このように、詩を届けるところを開拓していくことも考えたいです。現在は朗読と、ワークショップかなとおもいます。

組織化や運営など、問題は山積みで、とりかかれないのです、力不足を痛感

●インタビュー、取材、
雑誌やサイト、テレビ、ラジオ、新聞から取材を受けることが増えました。できるだけ、受けるようにしています。マスに広げていきたい気持ちがあるからです。

そのため、自分がやろうとしていることを明確にしています。

わたしの場合は、それぞれの人が自分の人生をになっていく意識をもってほしい という単純なものでそのとき、ことばが役にたってほしい というものです

これが、なんで仕事やねん、とつっこまれたらじぶんのやろうとしていることなんだもん としか答えられないです。

自分の思いを伝え、発表や発売前に、目を通せるものにはチェックさせてもらいます。編集されたものにも、責任をもちたいから。


2●詩人にできることを考えて、行動する
最近、詩人は伝える人 なんじゃないかな と思うのです。

先日、大学に呼ばれてトークと朗読をしたあと、来場者の盲目の人と話していて、胸が熱くなりました。

美術館は、立体作品には触れてもいいところが増えてきたそうですが、絵画は、美術館の担当者や付き添いのひとが数人集まって、説明するそうです。それを詩人のあなたのことばで聞いてみたい というものでした。

その時、ハッとしました。
わたしのワークショップでは「詩は、ただなんとなく発表するんじゃなくて、伝える意志をもって発表しよう」と言ってたのですが、詩人として、ことばを伝えることをもっと考えていこうと、ズシリ思いました。

3●ひとりからひとりへ届けること
このところ、わたしは、芸人やなあとか、営業マンみたいやなと、軽口を叩かれていますが、それらひっくるめれば、伝える人だからですよね。

こんな弱輩で、それでも仕事としようとするのは、人生をあきらめないためです。

わたしも詩人である母親から、趣味にしとけばいいのに、といまだに言われます。でも、仕事としてたちあげていくことが伝える、そのことの、いちばん効率のよい方法だと思うのです。わたしにそれができるかどうかなんて、わからないけどあきらめず、やっていこうと思います。失敗したからといって、とって喰われるわけじゃないしね。

わたしがこういうことを教えてもらったのは、詩、ことばからです。だから、ひとりからひとりへ届けたいのです。

月2本の詩を書いて、それだけで生活できることになんて、興味ないです。

働く人たち、学ぶ人たち、日々を生きていく人たちといっしょに歩きつづけ、今生の仕事をしていきたいです。

元気な人だって、ときには落ち込むし、そんな時に勇気のことばを。人生をどうしていいのか悩む人には、落ち着いて考えることができるようにことばを。
くりかえしくりかえし。
勇気は一瞬に必要なものじゃなくて覚悟したその翌日からも必要なことを、ことばで届けたい。