募集要項へ 
Send us your poetic heart.
  

 

 セレクト 詩ネマ セコンド BBS サイトシーイング






「棘」   yuunagi mail


棘は全部
見えないところに隠した
幾重にも
白い花びらを重ねて
誰の目にも見えないように
奥の奥にしまった

あなたがそんなに
深く入って来なければ
そのまま、うまく隠し通せたはずなのに
そこに広がる闇の深さに
気づいてしまわなければ
この棘で抉ることもなかったのに
でも、もう手後れ
この棘はどこまでもあなたの中に
食い込んでゆくだけ
さあ、その傷をみせて
わたしがつけた傷は
夜の空気にうごめき
疼いて
あなたを眠らせない
最後の時まで



上へ



「ヴァーチャルガール」   しゃち mailsite


ねぇ

私は手を差し伸べる

あなたの手はすり抜けて

私と重なる

小さなホログラムが

消えて

あなたはまた現れる

どうして?

私を救ってはくれないの?

抱きしめてはくれないの?

もっと愛したいのに

あなたはどこにいるの?

私の目の前には小さな風が吹いて

あなたの画像を吹き消した

私の大切なものを吹き消した

生き続けるのはいつまで?

私は見つめつづける

でも、私はせいいっぱい叫ぶしかできない

これ以上

私を苦しめないで

抱きしめたい

ただの無機質な存在が

欲張ってはいけませんか?

私は画面の中の

小さな光



上へ



「夕焼け」   涙委 mail


キレイなモノを見ると心が痛みます
なんてキレイなんだろうと
涙があふれます

西日に染まるベランダで
風にゆれる洗濯物
オレンジの滲んだ景色を
誰かもどこかで見てるでしょうか

空のあまりの大きさに
人は独りのような気がして
強く生きていかなくてはと
立ち止まるこの道も
悲しみ色に写ります

素直になれない私の
弱さを守る壁達も
そろそろ疲れて来てるでしょう
数え切れない傷と衝撃に
泣いているのでしょう

だから私の言葉達も
だんだん棘にまみれて
知らないところで
大切な人達さえも
傷つけてしまいそうで

こんな私なんて誰も見てはくれないと
人はやっぱり独りだと

それでも・・・

それでも
夕日は優しく包んでくれて 
それはもう優しくて 優しくて
こんなに荒んだ心を
こんなにも和ませてくれるものだから
心のキタナイゴミ達も
涙と流れていったように思います

空のあまりの大きさに
孤独を感じたけれど
そのあまりの大きさに
空の下 いつどこに居ても
誰かと繋がっている
なんて考えはじめました

人は空の下(もと)誰かと繋がっていられる
同じ夕日をきっと一緒に見てるのでしょう

あぁ夕日が沈んでゆきます
風も冷たくなりました
それでもあざやかなオレンジが
私の心を照らします

明日もまたそうやって 誰かの心を和らげて
そうして夕日は消えてゆくのでしょう
あぁ私も 
いつか誰かの夕日でいられたら
あなたの心をオレンジで包んであげられたら



上へ



「カフェテラス」   はやかわあやね mailsite


まいったね
こんな洒落たカフェで別れ話ですか
しかもそれって
先週からもう3回目
何言ってんだかわけわかんないよ

君のその白いレースのパラソルね
ここの雰囲気に似合っていい感じ
パステルカラーのハンカチだして
泣き出すことはないでしょう


一体僕が何したって言うのさ



ほらほらどんどんアイライナーが滲み出て
君のその垂れた目にはね
涙なんかよりも笑顔の方が似合うから
いつまでもわけのわかんないことで怒ってないで
早くそのカフェオレ飲んじゃいなさい

クロワッサンも食べ終ったらね
君の好きなミントチョコ買ってあげるから
そろそろ御機嫌直して笑ってごらん

ほら
何のことはない
やっぱりいつもの別れ話


オーガンジーのワンピース
風に揺れてきれいだよ



上へ



「何でもないこと」   てん mail


朝起きたら 
太陽が眩しかった
隣の家のたっくんの
「いってきます」
って声が凄く大きかった
それだけ
ただ それだけ



上へ



「のぞきみ」   南風桃子 mailsite


月の浜辺に
ガイコツが二体
腰をかけて
ならんでる

キレイネ
キレイダネ

星がめぐり
ヤシの葉がゆれる
月のひかりが
なみだをこぼす

コレイジョウチカヅケナイネ
ソウネ

それから
二体のガイコツは
コンペイ糖の数をかぞえながら

おたがいのホネを
イッポン イッポン
交換していた



上へ



「水辺にて」   さと mailsite


水の音、さらさらと

流れてゆく先には いったい何があるのだろう 

目的地なんて ほんの少しの小石で変わってしまう 


自分の意志は・・・・? 

意思はかわるのだろうか 

ほんの少しの小石で? 


小石ごと持っていく勇気をください  

人は変わるかもしれない。  

その変化も持っていこう



上へ



「夜月」   argiano mail


少し酸性気味の街の
ネオンサインの夜を見上げると
銀色の月が今日も歪んでいた

タバコの先に火をつけると
幼い頃見た夢が
ポッと一つ消えた気がする

依然この丸い地球は
ジャズミュージックに揺れていて
ゆらゆらと煙が揺れるのは
その為なんだと学者先生はおっしゃられた

食傷気味の愛は
甘い蜜を吸い取られた腐った林檎のように
どんなに中味が腐っても
表面だけは化学薬品によって
毒々しい輝きを放ちつづける

あの月が天然でいられるのも
時間の問題なのだろう



上へ



「ビルディング(最も芸術的な事象)」   田中 陽 mail


無機質のブラックボックスが
今日もまた炭の天井に向かい伸びていく
海に憧れ
狂い咲くベクトル

枯葉のオアシスとなるのは
幾数もの粉塵
シロアリは
その強靱性によって
自身の個性を全面に出す

昨今の桜並木の濃密過多により
緻密な芸術曲線が台頭してきた
それは圧倒的感動を我々にもたらし
同時に
境界線を越える神の大地を
柔らかに踏襲する後継者としての
人間の悦楽を高騰させる



上へ



「たった一度の出逢いが」   森沢アスラン mailsite


たった一度の出逢いが
わたしの運命を
こんなにも鮮やかに
変えてみせたのでした
まるで
ながいながい夜のあとの
ほのかがやく
朝のような
靴ひもだけをしっかりと結んだ
ひとりきりの
旅立ちのような
そんなひかりを
ある日わたしは
浴びたのでした
あのたった
一度きりの出逢いが
ほのかで
そしてちからづよい
ひかりをわたしに
与えたのでした
詩をかくことなど
考えてもみなかった
このわたしに



上へ



「存在」   たもつ mailsite


私はポツンだ
宇宙のポツンだ
名も無く朽ち果てていく
歴史のポツンだ

それでも大地に立ち
呼吸をし
飯を喰らい
排泄し続ける

この私という存在



上へ



「石鹸」   洛陽 mail


剥き出しの恋愛詩
愛はいつも語られるものではなく
洗面台のソープディッシュのうえ
今日も僕は
顔を洗ってからキス
ブルーのホリゾントに感情をあずけて
立ち回りの稽古に励む日々
そんなものをうっちゃって
バスルームの石鹸
よく洗ってからキス
ザ・ラビング



上へ



「静春〜他愛の無い話」   海 凍音 mailsite


 ねばーもあ
   (またとなけめ)
 ねばーもあ
   (またとなけめ)


先程から肩の関節のところで外れた左腕が
大鴉に変じて窓際で繰り返し


 ねばーもあ
   (またとなけめ)
 ねばーもあ
   (またとなけめ)


さんじゅうよねんかんも生きていると
この鴉が左腕に戻ることくらいは勿論のこと
鳩に変わることさえ奇跡とは思わなくなる

(それを知っているからこそ 鴉は大声で叫ぶのかもしれないが)


 ねばーもあ
   (またとなけめ)
 ねばーもあ
   (またとなけめ)


溶けてゆくことを知っている
ほどけてゆくことを知っている
待つということをおぼえている


 ねばーもあ
   (またとなけめ)
 ねばーもあ
   (またとなけめ)


鴉の背中の羽根が午後の陽光を跳ね返して
かゆみとまぶしさに涙ぐむ目をこする
ティッシュペーパーには春の色が残る


 ねばーもあ
   (またとなけめ)
 ねばーもあ
   (またとなけめ)


左手が無いのは確かに不便だよなと 
頭のどこかで考えながら
私はまた手元の会誌に目を落とす


 他愛の無い話である



上へ



ホシ コホシ イロハ   雲座 楓 mailsite


イロハ
 大宇に与へられませう藍染
 万角を爪先が刻むだ平線が輪郭よ
 私が湛へる蒼さの後追いを許してください
 子らは刻線のあちらを「そ・ら」と名付けて
 それは私の網膜が写した青でせう

ニホヘト
 宵明を告げる金鶏星に寝醒めの時を知り
 雲がどれほど雨を叩きつけても
 草木を育てるやうに
 船を浮かべて魚を遊ばせて
 子らを端の方で休ませて
 洗ひながら波を運んで
 幾綺羅星たちと佇んで
 藍世界に光を放ちませう

チリヌルヲ
ときどきに駆け抜けるはふき星
名も無く燐片を残すのみ
私もあんな風に散りたしと
大鎌に向かへば大花火
帰り逝きませみなみなさま
大蟹の背中から祝ひの蜂蜜を
釈王子が垂らしてくださいませう

ワカヨタレソ
獅子王を司祭に麦王と真珠姫の大結婚式
二人とも角を隠して
英国王の心臓を冠した大安が誓ひ
大熊妃と雌龍が囲みませう
健人よ姫を追つてはなりませぬ
彼女の決意を知るならば

ツネナラム
 河を隔てて恋人たちは働きて
 彦も織女も七夕を待ち遠しく
 立膝勇者が酒杯を遠ざけて
 射手神が毒虫を遠ざけ医師は大蛇を捕へる
 働け働けと明日女神が利を秤り
 白鳳様も上から見張りの周遊に

ウヰノオクヤマ
 山野の水辺で翔馬となる得瀬王子と
 鎖を解かれた安堵姫の慶びの契り
 官能のほとりを聖獣たちが見守りたまふ
 樫母も今日父も白鳳様も見守りたまふ
 とろるが来ませんやうに
 とろるが来ませんやうに

ケフコエテ
 大犬子犬と狩りに出たまま
 衿那の苦悶を織遠は知らずして
 帰つて来るなり足蹴に拳
 衿那の叫びに男たちが群がりて
 とろいが来ます
 とろいが来ます

 木馬まで持ち出して
 兄弟王子の助け叶わず衿那の涙が濁流となりて
 こどもがひとり流れに旅立ちぬ
 新しき地に幸運を祈りませう
 健人よ舟を導け子らが似十字に惑わされないやう
 由比様は箆様はどこかにおはしませう

アサキユメミシ
 月が黒く灼かれるとき
 有難祢姫の福音は指輪の降臨おめでたや
 水輪の上に金輪軒廊を巡る獣神たち
 お羊お牛その次に並ぶは双子
 蟹の宿狂える獅子と乙女子に
 傾く天秤這ふ蠍弓持ちついてに
 山羊叫び水瓶の水に魚ぞ住む
 おめでたやおめでたや
 はらから星たちと清心様に捧ぐ
 大十字を踊りませう
 舞台の袖を覗く偉大な詩人
 おめでたやおめでたや

ヱヒモセス
 乳さじから柄杓に落ちる乳
 誰もがさじ先から飲みたければ
 とくとくと聖流を遡る
 六星の六回生きて七星の七回死して
 のいまんの円理を欲する
 のいまんの円理を発する
 天のみぞおち
 いざのいまんへのいまんへ
 南無南無のいまん
 南無のいまん

 私はと言ふと酔ひもせず
 大火球のまはりを往つたり来たり
 いついつも私は銀河沙の砂銀魚
 ぽちやり



またお会いしませう
ぽちやり



ゑひもせす



私はと言ふと



ゑひもせす



奎星に祈りて



ぽちやり



トカナクシテシス



ぽちやり



上へ



大丈夫   ユー mailsite


大丈夫

気の抜けた心でむかえても

朝は朝だ


君は俺の「大丈夫だよ。」を好む

平気だよとか

気にしないよとかじゃない

大丈夫を明らかに気に入ってる

それが証拠にもう一度

もう一度と俺の低い声をせがむ


気に入ってるからこそ

平気とか

気にしないなんて言葉に

気をかけてくれないのかもとか


気はあくまで気なのかとか

じっくり考えてもみるけど

求められない時間は

俺にとってむしろ気が気じゃなくて


だからとりあえず

大丈夫と言い続けた

すると不思議なことに

本当に大丈夫になってきたよ

もともと冷静な俺だけど

君のことには気が違ったみたい

それも今は惑わずに信じられる


君を信じて見ることで

やっと気がついた

俺が大丈夫と言うということは

君がごめんとか

痛かったとか聞くということ

そう君は気遣いの人

気を配り気を遣う優しい人


気にしないのはもちろん

平らかな気も許さない

あなたなり俺なりを強く求める

変に気取った俺や

気負った俺は嫌ってことだろ


でももう

大丈夫だよ

気がついた今からは

もっと君の雰囲気を大切にできるから


大丈夫だよ



上へ



「恋愛論」   拓実 薫 mailsite


オレはかなりマジだけど
おまえには男がいる
その場合オレはどうしたらいいと思う?
奪う
諦める
見守って
朽ちる
バカ
冗談じゃないぜ
オレはおまえにマジなんだ
必ずわからせて見せるさ
おまえが寄り添うその男より
オレの方がずっと見てたって
ずっとおまえを見てきたって
時に気遣って身を引くほどおまえを
愛しているってな
好きで
抱きたくて
会いたくて
心も身体も欲しいんだって
なぁ
わかってるはずだろ?
おまえの目にオレだけが映る日まで
おまえの心にオレだけが宿る日まで
待っているさ
じっと
待ってる
おまえからオレを
必要だって言ってくれるその日が
くるまで
オレを惹きつけて離さないおまえでいてくれ



上へ



「列車と線路とスピードと」   ユユ mail


風邪気味の体を薬でおさえて
なんとなく電車に乗った

一番前の車両
運転手側の席に座り
横に顔を向ければ
運転手の頭越しに進みゆく線路がみえた

少しづつ速くなるスピード
風を切って進む感覚が
時間の速さと同じに感じた

僕らはこうやって進んでいるのか

ちょうど一年前のあの日
僕にはあの時間が苦痛でたまらなかった
君は君で
僕の痛みをわかっていたから
あんな顔をしたのだろう

寒さでかさついた手が
まだ暗闇で何かをさぐっているような
そんな時空に僕らは立っていた

最後まで振り返ることのなかった君の強い意志が
僕の未来への希望をきっぱりとはねつけたんだ

冬特有の高い空は
昨日の雨が嘘のように晴れ渡り
続きゆく線路の様子を
くっきりと浮かび上がらせている

こんなにも進んできたんだね
もう何も恐くないよ
自然と僕らは列車を走らせ
今日までやってきたんだから



上へ



「ペットボトル」   K,@,マーホ mail


大量生産で 作られ
放り投げたら つぶされ ポ−ン
同じ 帽子に
同じ 中身に
そろえられ 送り込まれ
もぬけのカラになるまで 使われ
中は洗浄し 山積みの ペットボトル
集められ 燃やされ
人に 帰る

思惑 困惑で
愛する人の為だと 戦い ポ−ン
ボタン ひとつで
決まる 自販機
突き進む 核ミサイル
一滴の血さえ この世から 消える
中は戦場で ゴミと化す ペットボトル
集められ 燃やされ
人に 帰る

そこは戦場で 人だかり ペットボトル
殺された 兵士は
人に 帰る

誰かの 気まぐれで
突然 音が鳴り出す
響けば ポ−ン



上へ



「第四無人地区」   山口タラサ mail


さめた空のしたで
袋をかかえた人たちがいったりきたりしている
屋台の大黒柱に風船がくくられている
それはみどり色をしていたが
光と見る角度によっては黄色くもみえた


ボビー・マイカをヘッドフォンから
頭に流しこむと
たくさんの喧騒と雑音は
さいげんなく広がっては集束されていき
靴音さえ遠のいた
まるで無人地区のようで
石段に腰をおろし 下をみると
汚れた側溝のすきまから
誰か覗いている


太陽はそのうち消えてしまったが
街はおだやかにながれてゆく
おやすみなさいが積もりにつもった
そのあとの路上にはなにもない
女子高生がひとり
プラタナスの木陰で携帯電話を耳にあて
そっと息をころしている



上へ



「路上」   蒼夜 mailsite


ねじくれた君の哀しみを癒すものなど
ゴミ箱を漁る野良猫にしかできない
けれどもその救いの手すらも
君ははねのけてぎこちなく笑う
どこで道を間違えたのかなんて
考えもしないでただ過ぎてゆく

君がいるその通りの名を
僕にはもう思い出せない

人にはいつか殺すか死ぬか選ぶときがくる
こころの中で繰り返される妄想
けれどそれが現実と知るまでに
君は既にいくつもの垣根を越えている
どこが安住の地だとしても
気づきもしないで唾を吐く

君がいるその通りの名は
僕には多分二度と言えない

耳鳴がする
世界が歌ってるんだ

君に落ちる夜も
君を避ける朝も
その通りにはないんだ

光にかざした背徳の色を
いつか表現できたとき
きっと僕もそこにいるよ



上へ



「未熟な苦悩」   希海 mailsite


先日、7年ちょっと友人でいる男性と半年ぶり位にお酒を飲んだ。
彼をきちんと男性として観た上で、心を激しく揺さぶられたこともあった。
その彼の友人と不潔な関係を交わしたこともあった。
私の大切な隠し事となった。
女性とは狡賢い生き物で、何も入っていない小さな箱を、大切そうにちらつかせなが
ら、色々な出来事を手に入れていく。
自らの肩の形、肌の色、欲から立ちのぼる匂い。
醜く変化して行くのを見守ることになる。
私ももう若くはないし、彼らも同じく疲れを肌に張付かせている。
彼らは疲れ、重い責任、守るべき小さな魂、大切な日常、その他の大切なものを次々
と手に入れ、根を広げ、濃い魅力を漂わす。
私と同じ生き物ではないように見えた。



上へ



「たね」   柳川杏美 mail


ネズミモチの実を鳥がさらいにくる

二羽、一羽、三羽、一羽
群れて 離れて
電線にとまる
公園のブランコはまぶしい赤で
あれに座るとお尻も染まる
頭が白い車が通る

最後の一葉(ひとは)が磁石のように
地球の真ん中を指し示す

網戸の中の風景は
昔の映像(こと)のように綺麗で
たてにもよこにも
砂あらし

傾いた電柱は
四六時中、
隣の電柱(やつ)に寄りかかっては
飛行機が飛んでくのを見てる

細い枝を踏みならし
鳥はとまる
最後の一葉(ひとは)が
ぐらぐら震えて
鳥は知らない。
地球にひかれて
落ちていくものを
そうして いつか
空に伸びることを

埋めなければよかった。
あの日見つけた鳥を
私は埋めなければよかった。

鳥はもう伸びない。



上へ



「爆発のあとで」   nao mail


明かりを消して毛布を被ると
暗闇の中で沢山の爆発が起こり

遠い空のずっとむこうに
幾千もの星が散らばった

おなかがすくのは生きてる証拠なんだって
おなかを鳴らしながら君はいうけど

僕はまるで
光速で移動しているような気がしてる
生きるってコト
まるで身体が引っ張られてるみたいで
物理的な法則は
魂の存在を証明したがっているようにみえる

暗闇の中で沢山の爆発が起こり
そのせいで君のおなかがなっている

おやすみ
やわらかな胸のふくらみ



上へ



「幻/言葉」   雄希 mail


きっと言葉は優しい 幻

ほんの一瞬だけ現われて

温度を残してすぐ消えゆく

心に残るものだってあるけど

必ずいつかは忘れてしまう

気持ちを裏切ることさえもある

心を素直に込める時だってある

でも時とともに忘れ去られるもの

消えないように守り続けても

気付かないうちに逃げていく

だから言葉は悲しい 幻



上へ



「なまもの」   容子 mail


身についた体は
肉と蜜で柔らかい形で
暖かい君の冷たい影に本物の君を見た
わたしも同じで
華やかに色づいた後ろの色の無い影に
本物のわたしがいることを知っている

柔らかい自分の肉も蜜も本当はただの生ごみで
今はかろうじて生きてるから君との距離に悩んでいる

肉はわたしのすすけた汚さを和らげ
蜜で削がれた部分を補う

わたしも君も今は生き物でだから
肉と蜜に汚れを隠しながら過ごして
肉と蜜に身をゆだねる



上へ



「まっ白な昼間」   春野 かおり mail


まっ白な昼間

僕は 「誰か」に会った

まっ白な昼間

その人はいうのだ

  後ろのそいつをどけてください、と

そこには 黒い猫がひとり

  ブルルー

  鳴いているだけ

だのに その人はいうのだ

  その いまいましいものを殺してください、と


まっ白な昼間

僕の頭は からっぽ

僕の顔は のっぺら

だのに その人はいうのだ

   ブルルー

   どうか助けてください、と



上へ



「逆転勝ち」   遥 mailsite


選択に失敗はないのさ 

後悔したとしても

最後には

「でも、あれがあったから、今があるのだ」

と 

そう思って

感謝したい

そして

笑って

逆転勝ち



上へ



「北アフリカがやってくる」   構造 mail


ずがんっずがんと沙漠沙漠沙漠
砂がパンツァー戦車だ、風がロンメル師団だ
俺は逃げ回るイタリア兵だ
俺は砂に向かい,風に向かい相変わらず
ドカンドカン援助してくれ
とたのみ俺の要求に結局のところ与えられた水と汗と
味噌の破片が入ったスープを俺は台所で飲みながらの
さわやかな朝だ



上へ



「空へ向かって」   綾野忍 mailsite


伸びをしましょう
背を伸ばしましょう
つま先立ちして
腕を広げて
思いきり
空に向かって伸びて

燦々と射す日差しを浴びて
精一杯の花を咲かせましょう

悩むこともあるでしょう
疲れることもあるでしょう
倒れることもあるでしょう
それもまたよいでしょう

寝込んで悩んで
疲れを癒して
再び空へ向かって
より一層伸びやかに

伸びをしましょう
背を伸ばしましょう
つま先立ちして
腕を広げて
思いきり
空に向かって伸びて

そして
空へ飛び立って

また成長していくのです
野に咲くたんぽぽのように



上へ



「見今視息」   石橋愛 mailsite


静かに時がゆき過ぎ
誰も思いだせずに居る
歳月をみてる

あの樹々の記憶した
時間をみてる
この大地の振り返る
日々をみてる
星々の沫雨の
あの人の悠久の
何ひとつ
この私にはない
月日をみてる

そして
夕辺の嵐を象った
その白い躰を
視てる


静かに時がゆき過ぎ
もう茲には
何もない

只 あなたへの
おもいを見てる



上へ



「禁じられた遊び」   詩人グエル mailsite


“人形の瞳はあちらがわの世界へ通じているの”

そんなことを言ってマリー君は
今日も禁じられた遊びに夢中になるのだ

触れてはいけないのに触れようとして
知ってはいけないのに知ろうとして

いけないことだと知っているからこそ
そんなにも君は夢中になるのだ

“私も時々あちらがわへと行けるようになったのよ”

“だめよ。そう簡単には教えてあげないんだから”

マリー君は
本当はそんなものは無いと知ったいるのに

火傷して
傷ついて
裏切られ
失って

そんな痛みすら愛しながら君は
今日も禁じられた遊びを繰り返す



上へ



「野焼き」   雨 mail


君を殺したいと思う夜があった

見慣れた君の無防備な首すじにかかる
私の手を想像したことがあった
腕に思い切り力を込めて
普段とは違う風に 君がうめく様を
又は 硬く握った右の拳で思い切り
君の頬を撃ち付ける様を

最早 洗われない干乾びた雑巾のように
疲れ果てた言葉の代わり
私が 君にしてあげられることを

どちらにしろ君は
もう私を動かしたいとは思わないだろうが



君は 野焼きを知っているだろうか

春に芽吹く 含羞多い草花たちのために
山や牧草地に火をかけて枯れ草を焼き
その成長を促す行事のことだ

焼き払われた枯れ草の中から
黄色を主とする初々しい春の草花たちが
壮大に許す空のもとで おずおずと顔を出す
そんな草原のどこかに きっと君の美しい骨がある

醜悪だった腐肉は炎に洗い流されて
そこに残るのは純白の陶磁だけ
素晴らしい丸みの頭蓋骨に しなやかな脾骨
綺麗なカーブを描く肋骨たち
それに寄り添うようにキスミレが咲き
君のからっぽになった眼窩では
春リンドウが恥ずかしげに領土を主張し
肋骨のアーチの間からはツクシたちが勇ましく空を狙って
そんな まるでローマの遺跡のようになった君を
もう一度だけ 私はいとおしいと思えるだろう



からからに使い果たされた言葉を
片手にぶら下げて 私は
君を殺したいと思う そんな夜があった
私も君も疲れて 怒る仕方すら忘れて
罵るための お互いの名前さえ忘れて

だが 炎に焼かれ
そこから現れるだろう君の白磁の骨を
私は美しいと思えるんだよ
淡い新緑の草原に散在する君の遺跡とそれを飾る数々の草花を
そしてそこから遠く離れた草原に私の骨も残る
その隣で 番いのホオジロは朝露を干していた



上へ



「半永久的−幸福伝達法」   南 mailsite


明日、地球は終わらないだろうから
星も少しづつ痛んだけど
赤い林檎は美味しくて
忘れ去られた子供の日時計
雨が降らないと野が渇き
クレパスで描く七色
ヒラヒラスカートや
埃っぽいスニーカーも
眠りのために風にさらす

色々なものに例えた空気が
充満してわずらったり
こそばゆく抱えたり
名前を呼んで
また泣いて
また笑って
また吠えて
まるで生きてるみたいに
追いかける仕草をする

死ぬまでわからないよ
わかるってなんだろう
死んだってわからないし
そんなだし
そんなわけだ

明日、終わらないけど
なにか、追いかける仕草をして
かつて生まれてきた
水の流れに似て
まるで生きてるみたいに
ひろげるから
まるで生きてるみたいに
ひろがるから



上へ



「ざわめき」   たるみ mail


躍るのは木
歌うのは風
観客はぼく
監督はきみ



上へ



「流些の刻」   掛川 享嗣 mailsite


無色の眼光に崩壊した空は いまだ自転の歯車を回し続ける 
微かに揺れている 渦巻いた日蝕の環に 写影機は 操られている
非具象絵画が 乱雑な閃光に 連写される
既に太陽と月は 暦を稼動させる数種の仕組の 一つずつでしかない
真円の回転が螺旋状に解れる変成は 暦法上に定められていた
短針と長針の関係性から 角度の概念が失われるころ
秒針の尖端から程遠い 針穴で慄いている動力の倦怠は 弛緩を欲し始める
暗闇の中の12音階の11番目は 13個の衛星に 守られている
13番目の月は氷の星
収縮しながら拡散して 光をこぼす星雲の只中に
過去の彼方から飛び込んだ 蒼灰色の燕星の光帯 軌道上に照らし出された 
月の名は 「174123」
その正面 太陽は黒く抉られ 
取り囲む 星々は 和音を溢して 弾かれる 
火花が飛び交う睫毛の隙間 
全ては冷えた煤に覆われ 大気は その屈折率と共に 震えている 
この空間において 光は 色彩を操る技法を失った 

枯れた大木の鍾乳洞に 六つの枯渇音が記された立方体が 凍えながら
幾つも転がり落ちている
鍾乳石より遥かに硬質な その立方体が一つ転がり出して 名のない音が 二三鳴る
灰色に氷結した湖面の上で 踊り子が 回転し始める
変形した爪先と か細い内転筋で 無味無臭の肉体と顔面を 回している 
紅い空の下に透視遠近法を無視して 一律の高さで連なってゆく 白樺の並木道を
黒く直進してゆく過去への焦点を暈し 浮き出した時点を凝視する 一つの
近視眼的意識技法は 断続的であれ 記憶を脳裏に結晶し 定着させる

幽かに波打っている絹地の波頭に 繰り返し現れる 複雑な
点 線 面 音 味 熱 匂 
柔らかな想い出に似た 胸やけが甘く染み渡る
何であれ 眼前にあるものが海だと 言葉なら言い切れる 
波をうけ 沖へ流されて 
脳が再現以外の表現を 意識に伝えられるのは いつになるだろう
不規則に移ろう進路と方位は 現在と未来を 同時に 複数の回転軸で
ぐらぐらと立体的に 回している

近付かず 引き寄せず 
滾々と現れる事象が 言葉では表せない 色彩の証明を 時間を用いて 綴ってゆく



上へ



「上流へ」   箱 mail


漕いで
握りしめるほどに込める
背を向けた漂流の力に届けと

歌う
かつての足枷を
流れのなかに沈めるため


 上流へゆけ 若者よ
 魚の動きに 目を向けて
 森林のざわめきに 耳を傾けて

 ここには何もない
 上流へゆけ
 上流へゆけよ


深い痕跡が残された
ジャングル
雨に濡れたままで見つめる
マングローブ
項垂れる葉茎
引き締まる度の筋肉に滲む
汗には行きどころもなく
木々の呼気ばかりが覆う

ルンロア
ルンロア
息を切らす手前の躍動
そしてまた
漕いで
握りしめるほどに込める



上へ



「伝説の丘に」   鈴木倫子 mailsite


一編の詩で
心の渇きを潤せるなら
そんな嬉しいことはない

私の潤いを
あなたに伝えることができたなら
そんな嬉しいことはない

伝える翼を持ったモノたちが
舞い降りる
伝説の丘に



上へ



「14日」   NARUKO mailsite


先日の心霊特集のテレビで見たんだ
14日に
14人の人が
14番目の駅の工事中に
事故で亡くなったのだと


高架にある
その駅の
その駅の
その駅の
その駅の
下をくぐるときには
息を止める


平気なスピード
無謀な蛇行
喧騒は無効
このアスファルトには
頭が
腕が
足が
血が
敷き詰められていたのに


高架にある
その駅の
その駅の
その駅の
その駅の
下をくぐるときには
上を見ない


先日の心霊特集のテレビで見たんだ
14日に
14人の人が
14番目の駅の工事中に
事故で亡くなったのだと


お返しキャンディを渡すその手で
魂を
引き千切ってしまったことを


高架にある
その駅の
その駅の
その駅の
その駅の
下をくぐると
玄関が見える



上へ



「冬猿」   ColdDog mailsite


アパートの四階で春を待つ 猿がいる

冬は寒いから嫌いだと 外へも出ずに

畳一畳ほどの窓から

冬の温度を眺めて



あれはいや、それはいい そんなこんな

ばかりで土は 随分と遠い

けれど空はもっと

遠くにあるので



季節はいつも少しだけ遅れて届く



千切れ雲が引越し先へ急ぐ そのさまを

雑木林がぐだぐだ手を振って見送るよ その先に

木枯らしが鳥を絡め取るのだ 鳥はきっと

この冬を越えるだけの命をまた 喰うのだろう



ただ

猿は待つ 春を待つ

鳥よりも多く喰らって知らぬ間に

死なぬ間に

春が来るこのアパートの

四階で



上へ



「different」   umineko mailsite


ていねいに
輪郭をなぞる
君の君を

ねえ
何処に行きたいの?
僕は思わず尋ねる代わりに
声を塞いだ
唇で

僕と君が似ているところ
いくつあるだろう
自由が好き
人込みが嫌い
少しだけ嘘を つく

違うところはいっぱいあるから
数えてもしょうがない
胸の奥で欠けたピースの
かたちも少し
違う

そんなかけらを合わせるように
声が僕を探してる

携帯電話はがさがさ落ちて
テレビは無邪気に笑顔を投げて
開けっ放しのパソコンは
一足お先に
スリープ

僕の指が
君に届くと
君は困った顔をして
それでも

僕らはぼんやり気付いてる

忘れるために首を振っても
大きく膝を抱えても

それは少し違うから

君と僕との
欠けたピースは
それでも少し違うから










BBS   ドルチェは投稿先着順に掲載しています




 

  

 投稿いただいた方のためにバッジをご用意しました
 ご自由にお持ち下さい(白地用・白地用・色地用)







    crew

   desk/ 竹垣尚太郎
   editor/ きぬ/ni-na/いつき/河野龍彦/ユースケフクイ
   photographer/ ni-na/MERI∞TADA
   designer/ 木村ユウ/竹垣尚太郎/ni-na
   producer/ 木村ユウ

   presented by corrado@com 著作権は各著作者に帰属します 
   (c)Copyright 2002 by corrado.com All rights reserved.
   All original works published in this web site remain under the copyright protection as titled by the authors.
   サイトに対してのご意見・お問い合わせはこちらまで An inquiry is to here→ zamboa@web-corrado.com