シネマ「イッ!イッ!」
   映画好きのコラードスタッフが勝手になんでもシネマトーク






VOL2.
「シャイン」

SHINE

1995年 オーストラリア映画 アカデミー賞受賞作品
監督 スコット・ヒックス
出演 デヴィット/ジェフリー・ラッシュ
   ノア・テイラー、リン・レッドグレイブ

ユダヤ人の貧しい家庭に育ったデヴィッドは音楽のできる父にピアノを教わる。やがて天才的なピアノの素質をもつデヴィッドは数々のコンクールなどで優秀な成績をおさめる。そんな前途有望な彼にくる留学の話をデヴィッドを一心不乱に愛する父親は、はじめは息子の留学を祝福しようとするが、いざとなるとパニックを起こして息子を手放せなくなる。しかし二度目にデヴィッドは父親の反対を押し切ってイギリスへ留学し、父親は親子の縁を切ると宣言。そんな父親の歪んだ愛情にデヴィッドはだんだん気がおかしくなっていく。・・・実在のピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴッドの数奇な運命を映し出した名作。





ユウ編集長

僕さ、ちょっとこの映画の感想って、
上手く言えないんだよ。
まず軽いとこから行くと、俳優が幼年期、少年期、中年期の
それぞれが別の人で演じているわけだけど、
これがいいの。
だいたい少年期の子役がいいと中年期の俳優がよくないとか、
見てる途中で「えー? これがあの子お?」
なんて言いたくなっちゃう映画がほとんど。
だけどこの映画は三人が三人、本当に魅力的で、
感情移入が途中でとぎれない。すばらしかった。

nao

子供の頃は大人で大人になったらだんだん子供になっていく
..っていう感じで、私は中年になってからの主人公に
一番の魅力と人生の安らぎや優しさみたいなものを
見い出して、良かった。
青年期の彼は本当にきつい人生だったように思う。
本当におおまかな感想なんだけれど。。

ユウ編集長

そうなんだよね。
大人になったディビッドがはじめてMoby'sの店で弾いたときの、
あのピアノ。
ディビッドがどれだけピアノを求めているのか。
あのシーンは何度も見てるんだけど、鳥肌が立って仕方ないんだよ。
あそこにいた全員が息をのむ。
僕も息をのむ。

nao

なんといっても
煙草をくわえながらピアノをひくのがかっこいいんだよね〜。
本物の天才を感じさせるところだよね。

ユウ編集長

僕も「カラーズ」とか「木蓮」なんかはくわえ煙草で書いてるけど、
どうよ?

nao

お〜!かっちょいい〜!って
どうして話しがそっちに流れるの??

nao

でさあ、一言では言いがたい深みのある映画だね。
お父さんがとにかく猛烈パパなわけよ。

がき

ラフマニノフの3番を演奏してる途中で
デビッドがおかしくなってゆく、あの表現がこわかった。
二度観て気が付いたんだけど、その前にも『お前は家族だ。
どこへもやらん』と
父親にアメリカ行きを激しく反対されて、
そのあとのバスタブの中で膝を抱えて蹲るシーンでも、
同じように蛇口から落ちる水滴や、バスルームに入ってくる父親の動きが
スローに見えて一切音が聞こえなる。
父親の愛が大きすぎたんですね〜〜・・。

きぬ

実は3〜4年前にも観てるんですが、
やっぱり胸にくる物がありますね。
主人公も哀しい人だけど、あのお父さんもすごく哀しい人。
パパが子供の頃から、デヴィッドという才能ある息子を得るまで、
その心の中にどんなものがあったかを想像すると、
とても辛くなってくる。
その哀しい父子を見つめている姉妹と母親の眼がまた。
ある意味残酷な家庭の中も、光をぼかしたような映し方で
まるで絵画のように見えるのよね。
そうなんですよね、ラフマニノフの3番演奏しながら
彼はおかしくなっていく。
でも、あのシーンはデヴィッドが一番美しく見えるんですよ。
本当に悲しいことに。

nao

きぬちゃんはあの部分が一番美しく見えるのかあ。。
私は多分、がきちゃんの言っている感じと似ているかなあ。
怖いし目をそらしたくなる。
彼の青年時代は目をそらして、その部分だけ飛ばして見て
しまいたくなるくらい。
その代わり、中年になった彼はとても人間らしくって
いいなあ、って思うんだよね。
あのお父さんみたいなタイプの親が子供には一番大変かも
しれないね。期待されていて、可愛がれていて束縛する..
という。。子供はやっぱりある程度、自由にさせないと
だめだと思う。ある時期がきたら。。と自分にも言い聞かせなきゃな。

きぬ

「子供の自主性を尊重して〜」という事が
最近盛んに言われているけど、難しいよね。
親はある程度、子供に自分の叶えられなかったものを
託したい気持ちがあるし、特にデヴィッドのお父さんは
そういうのが強かったんやろうね。
家庭に恵まれなかったから、よけいに自分の家族に独特な
執着心を抱いたり。
ロンドンで渾身こめてラフマニノフ弾いているシーン、
やっぱり怖いですよ。怖くて美しい。
演奏中から、もう正気じゃない。
でも、「正気を失ってでも」一瞬にかける演奏をしたいという
気持ちは分からないでもないかな。
結局精神を病んで、中年になっていろいろ辛かったと思うけど、
内面的にはちょっと開放された気がする。

nao

デヴィットの一家はユダヤ人でお父さんはアウシュビッツを
経験しているらしい。
だから執拗までに家族の結束を求める。
あれほどまでに可愛がった子供と
大人になってからほとんど接触もなく
死ぬ前に一度会ったきり....というのは
現実的で実際にそういう話しは多分たくさん
あるのだろうけれど
本当に悲しい親子だね。でもそれが運命というものかな。

いつき

天才であるがゆえの至上の喜びと、
天才であるがゆえの多大なる犠牲の
狭間がとても見てて心痛かったです。
父親は自分がなしえなかった事をデヴィッドに
託したんだと思うのですが、その自分の希望と
デヴィッドへの愛情が深すぎたが為の悲劇という
のがやっぱり、見ててすごく突き刺さってきました。
ラフマニノフの3番を弾いてる時にだんだんデヴィッドが
壊れてゆくのですが、私もきぬさんと同様、あの場面が
一番印象的で、美しい場面だと思いました。
きっと、彼はあの瞬間、あの到達点を極める為に
ピアノをラフマニノフを弾いた、そんな気もします。
モノを作ったり、伝えたり、奏でたり。
いろいろなものをクリエイトする人達が夢見る到達点
なのかもしれない、と思いました。

ユウ編集長

そうだのう。
でもうちのスタッフなら少なからずああいう思いしてるんじゃないの?
僕は吐き気が止まらなくなってから、
ある程度は引き換えだなと思ってるし、でも僕は、
そういうのって天才とはちょっと違うように思うんだよ。

きぬ

うん、誰しも多少なりともそういう思いはしてると思うよ。
繊細って言われるような人なら特に。
表現とか創作って、なんだか心を削ると言うか、すり減らすような
(うまい言い方が考えつかないけど)
ところがあると思うんですよ。
とりわけ、デヴィッドは家庭環境からして抑圧的に育てられた
点もあるから、余計に犠牲になるものが大きかったのかな。

ユウ編集長

なーんかこの映画って、ディビッドと自分が似てる気がするのか、
(笑うとこだっ!)
実は十回くらいみてるのよな。
でね、中年ディビッドと父親役が、すごい深い演技してんのよ。
映像はさらっと流してんだけど。
ギリアンにプロポーズしたあとで、抱き合うときの
ディビッドの表情とか、
店の二階の部屋で去るときの父親の演技とかさあ。

いつき

さらっとした映像の中でも
父親の表情とかデヴィットの表情とか
言葉は少なくても、すごく印象に
残りますよね。
逆に、さらっと流したからこそ、
ここまで印象に残ったのかもしれないですね。
私の中ではある場面場面がフィルムのように
残像として残ってるような。
不思議な感じがします〜。

けーた

俺は、あ〜この時って一体どんな気持ちなんだろうなぁ〜
って事を考える所が結構あったように思います。父親とか特に。
なんとも言えない、っていうそんな表情を作ってましたよね。

いつき

そうですよね。言葉にできない感情を
表現にしてるような、そんな深みがありますよねぇ。
表情一つで演技ができる、表現する。すごいですよね。
役者ってすごいな〜〜。

がき

謎。青年時代のデヴィッドが友人と行った酒場で
じっとこちらを見つめていた女装青年(マーク・ウォーレン)は一体・・・。
朝目が覚めるとデヴィッドの首には彼女の赤いマフラーがー。
モデルになった実在のデヴィッド・ヘルフゴッドが
映画で流れているピアノ曲の大半を演奏しているそうです。
数年前に確か日本でもリサイタル開いていましたね。
CD買ってみようかな。

いつき

あ、私も、それは謎だな〜と思いました。
そして、理由がわからないまま進んでしまい
見終わってしまったという感じです。
また次、見た時にしっかり見ておきます〜。
(全然答えになってなくてすいません・・・)
デヴィッド・ヘルフゴッドが弾いてるんですね。
あれだけ鳥肌もののラフマニノフを弾ける方なので
是非、私も買って聞いてみようと思います。

けーた

え、あの俳優さんが弾いてるわけでは無いんですか?
なんかスゲーと思って見てたんですが・・・

いつき

多分、指の場面だけは、実在の
デヴィットに弾いてもらったのでは?
あ、でも、全身が写ってる時にも
弾いてたけど、指は合ってたような気が。
でも、あのピアノの指の動きができるのは
指が強靭でないと無理ですよね〜。
もし、あれが俳優さん自身が合わせた
ものであれば、その俳優さん自体が
すぐれたピアニストになれそうですね。
あ、でも、大半を弾いてるってことは、弾いてない曲も
あるわけで、俳優さん自体がピアノを弾ける
方なのかも??

けーた

そうですね〜。子役からみんな弾いてましたよね〜。
あと、お店行って初めて弾いた時なんかは役者さんが
後ろ振り返りながらで。
うーん。手の形のくせなんかも、小指の曲がり具合とか、
ピアノやってそうな感じで・・。
でもこういう所もあるから、すごく人間にリアリティが
あるんだと思います〜。
で、ほんとはどうなんだかわからなくなる。
そういやラフマニノフの手の石膏もすごく大きくて、
ごつい手でしたよね。

がき

成人後のデヴィッドを演じたジェフリー・ラッシュはピアノ教師だそうで、
吹き替えなしで演奏したそうです。
実際のラフマニノフは190センチを超える長身で、
手も実際にきわめて大きかったそうです。
デヴィッドのピアノへの情熱が、すっごい伝わってきました。
弾きたくてしょうがなくてピアノに掛けられた鍵を針金で
開けようとするんだけど開かなくて、Moby'sの店に行く。
隊長と同じく、あの演奏シーンには鳥肌・・というか何だか嬉しくてすごいワクワクしました。
もっと暗い映画かと思ってたけど、見終わったあとはとっても温かな余韻に浸れた・・。
何度でも観たくなる〜〜(*^_^*)
銜え煙草で弾く、あれは最高にかっこいい!(ってみんな言ってる感想ですいません(^-^;))

nao

そうだね。ピアノと父親によって壊されて
ピアノと人間によって救われた..という人生かな。
やっぱり歳を得てからの彼の周りの人間が、みんないい人達
ですよね〜。そう思わない?みんなすごく彼に対して
理解力がある。それでまた彼もちょっとおかしな行動って
あるんだけれど、とても人から好かれる性格だよね。

きぬ

そうそう。中年あたりから本当に素直になっていく。
少年期から青年期はいろんなもの(父親が一番大きいけど)に
抑え付けられていたような感じだったけど、
精神を病んで、中年になってからそういうつっかえが
取れていくみたいで。
シルヴィアやギリアンも、彼のそんな明るい素直さが
気に入ったのかな。

ユウ編集長

出会いだよね。









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