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華代子は覚えている?―――


どこまで転がり落ちてゆくのか底すらも見えない日々の中で、”いつなにがあってもおかしくないことを、ここはそういう世界であることを学んだ”ひとりの少年。

そこに差し伸べられた、光明のような華代子の白いてのひら。自分を慈しんでくれる美しいひと。はじめて知る魂の平安。だが突然に「その日」はやって来た…。 ――人はなぜ不幸に絡めとられてしまうのか―― 大人になっても彼をさいなむ思い。坂道の上にあった白い家での僅か一年の記憶は、そんな彼を支え続け、そして光の方向へとそっと背中を押す…。

この十年来、曽根亘元(木村ユウ改め)が書き綴ってきた「change the world」シリーズが遂に完結。出版にあたり大幅に加筆・修正を行い、また、書き下ろし作品も含む全三十五篇。


収録作品

国道/焼かれたパン/
光が射していく順番、リスト/話をしてくれ/
ジャック・マイヨール、草の中の足/
ホテルシナモンズで/臘梅/焔の中で/
屋外市/カラーズ/
ばら色の砂/木蓮/
気配/水のない東カナルには/
蜜の流れ/
クールズ(足)/

コーラル/エイプリィル・デイズ/
六月、カフェ/マティニ/
その夜食べられるキャベツの枚数を/
テラス、その水の匂い/
パンジー/けし/月光/
パラフィン、冷たい水蒸気/洋梨の味/
影/歌/
銀色向こう側/炎の環/
耳を満たす海水の青、白ワイン/
髪/坂道/
珊瑚/
 
 
 
 

 
珊瑚

 
●著者  曽根亘元(木村ユウ)
●出版社  ポエトリージャパン
●ISBN 978-4-9901806-8-3
●価格 1,890 円(税込)
●サイズ 128mm×188mm
●164P
●2008年9月5日 発行
●在庫数 あと286冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
気配   木村ユウ


まだあたたかい君を抱いて
芝の横の歩道の、アスファルトの上で、
僕はただ


‥‥わからない。
きっと君に話しかけていた。
夕方の長い光線で
僕と君はフィルムの中にいるみたいだ。
音がなんだかぼやっとして聞こえないのも、
フィルムの中と同じだ。
もうひとつ似ている光景があるけれども、


(一部抜粋)
 
 
 
 

 
クールズ(足)

 
●著者  木村ユウ(曽根亘元)
●出版社  ポエトリージャパン
●ISBN 4-9901806-2-3
●価格 500 円(税込)
●サイズ 148×92mm
●32P
●2005年8月9日 発行
●在庫数 あと5冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
西武新宿線 沼袋〜野方間   馬野幹


西武新宿線の下り各駅先頭車両の一番前っていうか
その、つまり運転手さんからとびら一枚隔てたすぐ後ろで
ぼくは黒人と並んで窓のそとをみていた
正午過ぎでさわやかな気持ちだった
俺たちはもう猛獣を槍で殺したりしなくてすんだ
誰もが財布にマネーやコインを持ち安全にスーパーで買い物をする
閑静な住宅街でもまぁ月に一度くらいは殺人事件も起きるけれど
たいていはやっぱり平和で
おばあちゃんたちは花に水をやったり隣の家の子供にせんべいをあげたり
おじいちゃんの仏壇に線香をあげて少し通じたり、うん
商店街は盛況だし
ほとんどの豚肉は安心して食べられるし
飢えや寒さに苦しむ人もほとんどなく
猫はあくびをし
チワワは歩き
ほのぼのしている
そんな町でぼくは黒人と並んでみていた
西武新宿線の下り各駅先頭車両の一番前っていうか
その、つまり運転手さんからとびら一枚隔てたすぐ後ろで
レールに反射する太陽のひかりを。
 
 
 
 

 
下敷きで光を

 
●著者  馬野幹
●出版社  ポエトリージャパン
●ISBN 4-9901806-3-1
●価格 840 円(税込)
●サイズ 148×92mm
●36P
●2006年7月2日 発行
●在庫数 あと35冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
夜   北川浩二
 
 
夜はだれのところへも来て
もう戻れないことを知らせる
時は流れている
二度と引きかえすことはできないと
 
ここにいるということも
実はそんなに長くないこと
百年は一瞬だから
息をとめC-3/L-1  
 
 
 

 
パイロットボートの深夜行

 
●著者  北川浩二
●出版社  ポエトリージャパン
●ISBN 4-9901806-0-7
●価格 1,995 円(税込)
●サイズ 177×110mm
●108P
●2004年11月30日 発行
●在庫数 あと21冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
静かな顔   北川浩二


ひとりで暮らすとしたら
もしもひとりで生きるとしたら
ただそういうことになったんだと思って
静かな顔をしたい

その静かな顔が
生涯続けば
それで静かな人生の完成
不思議だね
不思議だよ

一晩中ついている
明るい電灯のように生きていきたい
誰も消さないので
一晩中ついたままの
明るい電灯のように生きていきたい  
 
 
 

 
静かな顔

 
●著者  北川浩二
●出版社  ポエトリージャパン
●ISBN 978-4-9901806-7-6
●価格 1,470 円(税込)
●サイズ 110mm×178mm
●78P
●2008年7月31日 発行
●在庫数 あと81冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
償い   岡田すみれこ


もう帰るところはありません
と言われたから
森の中に見つけた木のテーブルに
カバンの中身を全部あけて
そばに自転車を置いて
古びた木の椅子に腰を下ろす
そんな夢を見た


森は風が吹いているみたいだ
でもわたしには
帰る所がない
誰に言われたのかわからない
年老いた母親や
順調に事業をしている兄の顔を
思い出している
わたしはまたとんでもないことをして
家族に疎まれてしまったのだろうか
三十年も前に家出した時のように
自我ばかりを主張して
そしてやっぱり男が好きで
だから男もわたしが好きで


このテーブルと椅子は
確かにわたしに用意されたものらしい
乗り慣れた錆びた自転車が
忠実なロバのように自分を見守っている
カバンの中身は
本やノートや手帳や鍵だったはずなのに
不思議とテーブルの上には
冷めたコーヒーや不味そうな食事が
並んでいる
こんなものいらない
     でも わたしには……


顔を上げて遠くを見ようと思う
けれどよく見えない
誰もいないし
感じるのは風にそよぐ木の葉と
白く明るい陽の光だけ


許しを待ちながら
ぼんやりしている
おそるおそる孤独の手触りを確かめながら
何故ここへ来たのか考えようとして
消えたノートや手帳の記憶が
切実に胸に迫る
男が買ってくれた本や
無意味となった家の鍵は
もういらないとしても
わたしの言葉たち
どこへ行ってしまったのだろう


「もう帰るところはありません」
そうか コトバはワタシを棄てて
森へ彷徨い出て行ったのか
見上げると木の葉は
風と光で瞬時に表情を変える
ふいにわたしは
声さえも失われている気がして
慌てて立ち上がろうとするのに
茫然と座ったまま
それが罰なら受けるしかないのだと
夢の中だから思っている
意識は絶え間なく流れ出て行くので
わたしはいそいで
夢から醒めなければならない
 
 
 
 

 
もう帰るところはありません

 
●著者  岡田すみれこ
●出版社  ポエトリージャパン
●ISBN 978-4-9901806-6-9
●価格 1,800 円(税込)
●サイズ 210×148mm
●116P
●2007年3月31日 発行
●在庫数 あと5冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
世界はいま、キッチンにあるとして   竹 文馬


水びたしの指で
コンセントに差しこもうとした
叱られた
しらない世界はいっぱいある
目のまえのオーブンの火照りもしらない
けれど追いかけたりしない
食パンにまかせて
いいとおもう


世界はいま、キッチンにあるとして
 
 
 
 

 
世界はいま、キッチンにあるとして

 
●著者  竹 文馬
●出版社  日本自由詩協会
●ISBN 4-9902343-3-2
●価格 788 円(税込)
●サイズ 148×105mm
●76P
●2006年10月20日 発行
●在庫数 あと10冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
いろえんぴつ   なかむらてつや


いろえんぴつをみせて
愛想のいい店員に
値段をいわれて
まだおさなさの残る娘が
ちいさな口でキャンセルといっていた
手の中にあった
いろえんぴつは
一本ずつレジのうしろに
もどされていった
いろが
返されていくのを
あの娘は黙ってみつめていたけど
頬が紅潮していた


くらい空のしたを
あるくとき このごろふいにおもいだす


いろえんぴつは
体温を失ってから
だれかの手の中で
いまはいろをかがやかせているだろうか


あの娘のみていた
いろは
どんないろだったんだろう  
 
 
 

 
mocha(モカ)

 
●著者  なかむらてつや
●出版社  日本自由詩協会
●ISBN 978-4-9902343-6-2
●価格 500 円(税込)
●サイズ 148mm×97mm
●48P
●2008年5月31日 発行
●在庫数 あと3冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
Moon Taxi.   芳賀梨花子


わたしは一人
天窓のある部屋で
そんな悲しみに耐えている
見上げると上目遣いになるから
君に嫌われるといやだから
見ないよ
どこへでも連れて行ってくれる幻想
あの角で拾ってくれたなら
今頃きっとわたしは
なんて恨みがましいことを言っても
仕方がないから
溺れながら震えている
ほくそえんでいるわけでもないのに
君の冷たさにぞっとする
ねぇ、息をするのを休んだら
どうなるのかな
君のことなんて必要としない
大きな翼が背中に生えたりするかな
 
 
 
 

 
Cafe@Sunny*Side*Papers*

 
●著者  芳賀梨花子
●出版社  ポエトリージャパン
●ISBN 
●価格 525 円(税込)
●サイズ 200×115mm
●12P
●2003年7月5日 発行
●在庫数 あと57冊
 
 
冊 
    
 

 


 
 
左手に死   鈴川夕伽莉


亡骸となったあなたのおつむを撫ぜた時、
私の左手には死が宿ったのです。

あなたは葬儀の準備が整う間、
霊安室に置かれたベビーベッドの中で迎えを待っていました。

あなたのほっぺの固さが私の身体の芯まで凍りつかせました。
それ以上撫ぜ続けることが出来なくなりましたが、
手を放した瞬間、私は
死を自分の身体に刻印させる必要に迫られたのでした。


あなたの身体はお母さんのおなかの中で突然
生きるための力を失ってしまいました。
緊急帝王切開、心拍はおろか呼吸すら始まらない
だらんとした身体が運び出されました。
気管内挿管、ペコペコと心臓マッサージを始めて
15分あまりでしょうか、あなたの心拍は再開したのです。
正直、私も蘇生にあたったもうひとりのドクターも驚かされました。
慌しいままNICUへ、人工呼吸器による管理が始まります。

果たして何の権利があって
私はあなたの生命予後について家族に語るのか。
強度の低酸素状態に曝された脳神経細胞の障害は
おそらく不可逆だ。
自発的な呼吸は始まらないだろう。
そのうち全身臓器の不全症状が出現するだろう。
それらはめぐりめぐって、心臓の動きも障害するだろう。

面会するお母さんとお父さんに、
あなたを抱っこして貰うことにしました。
お母さんはあなたのことを温かいと言った。
私はお母さんの傍らに立ち、気管内チューブを支えておりました。
利き手である右手を使えば確実にあなたの顔を覆ってしまうので
左手で支え続けました。
チューブが抜けぬよう、かといってお母さんの視線を遮らぬよう
左手のかたちを保持するのには案外、力が要りました。

お母さんとお父さんはそのとき80年分に匹敵する愛情を
あなたに与えていたに違いありません。
この子はお母さんとお父さんに抱っこされたくて
死の淵から戻ってきたのだと。
こんなに頑張って生まれてきた子は見たことがありませんと。
信じます。しかし、とてもじゃないけれど
口に出すことは出来ませんでした。
血圧がゆるやかに落ち、心電図がフラットになるまで
あなたが産まれてからちょうど24時間でした。
心電図の波を凝視するお母さんを凝視していた私は
情けないことに死亡宣告をすることが出来ませんでした。


翌日、亡骸のあなたはお母さんに抱っこされ
お父さんの運転する車に揺られて病院を去りました。

私の左手をあなたのおつむやほっぺの感触が
侵食し続けました。
左手を、あたたかい右手で包んでみました。
たまらなくなったので、自分の頬にも押し当ててみました。
ところが一向に私の左手には熱が戻りません。

死は左手だけにとどまらず心臓にまでのぼってきました。
血流を介してそれが全身にまで行き届いたとき、
あなたの死は私の身体に取り込まれるでしょう。

糧としてではない。
生きている私の身体の、一部となるでしょう。

それを待つ間、重くだらんと垂れるがままの左手を
何度も右手であたためるのでした。  
 
 
 

 
ミドリンガル

 
●著者  鈴川夕伽莉
●出版社  祐園
●ISBN 4-9902343-0-8
●価格 980 円(税込)
●サイズ 148×105mm
●70P
●2004年12月18日 発行
●在庫数 あと7冊
 
現代詩
 
 
冊 
    
 

 


 


 
本屋さんで立ち読みするときは一冊ずつ。でもポエトリージャパンでは一気に読めちゃう。これもネットならではかもしれません。気に入った詩集はもちろん購入できます。
 
 

 

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